DV防止法が出来て十数年経つ日本だが、未だに被害者が加害者の家から逃げ出さなくてはならない状況が続いている。

 離婚成立前のDV被害者は、住民票を加害者と同じ住所の住民票は動かさずに、加害者が知らない場所、身の安全が図れるほかの地域に逃れて暮らすことになる。

 現在ではDV被害者やその子は、新しく住むことになった場所に住民票がなくても、行政に申請し認められれば、国民健康保険は取得でき、一緒に逃れた子どもも保育園、学童クラブ、学校に通えるなど、福祉から外されることがないようになってきている。

 なぜ住民票を移さず転居するかというと、戸籍を一つにする加害者は「戸籍の附票」からたどって、被害者の新住所を見つけ出すことができる。引っ越し先の住所が加害者に分かってしまう危惧があるので、被害者は手続き的には様々な面倒がつきまとうものの、離婚成立(戸籍が別になる)まで、住民票を移さないのが基本になっているという。

 

 また、離婚成立後でも加害者が追いかけてくる危険がある場合や、ストーカー被害の場合、住民票は加害者に開示されないようにすることが、行政への相談・申請などを通して可能になる。加害者が弁護士を不法に利用して情報を得たり、行政の人的ミスでの漏洩など、被害者の個人情報の完璧な防御は難しいが、個人情報がある程度守られる、この「住民票の閲覧制限」制度は、被害者に一定の安心感をもたらすだろう。

 しかし、このサイトでも取り上げている共通番号制=マイナンバー制は、DVやストーカー被害に遭って逃げている人にとって脅威となりうる。

 

 とりわけ、共通番号制の便利さとして宣伝されている「マイナポータル」は、被害者にとって危険なシステムになる。

 ※マイナポータルについては以下の内閣府の動画を。

https://www.youtube.com/watch?v=4AT08KYZYNM&feature=youtu.be

※内閣府の「マイナンバー総合フリーダイヤル」は、以下。

http://www.cao.go.jp/bangouseido/case/contact/index.html

 

 被害者が、マイナンバーカードを加害者のいる家に置いて逃げた場合、マイナンバーカード(通知番号カードでなく)と2000円前後で購入できるカードリーダーがあれば、加害者は自宅のPC(今後はスマートフォンでも)で、逃げた被害者の個人情報から、現在の居住地がたどれてしまう危険がある。

世帯ごとに送付された通知番号カードを使い、加害者である夫などが勝手に被害者(妻や子など)になりすましマイナンバーカードを申請してしまったらどうだろう。

    
 被害者が加害者から逃げる場合、従来の住民票の閲覧制限や警察への捜索願不受理願いを出すほか、以下が必要となると思われる(カードを作ってしまっていたら、先ずカードの停止ですかね……)

  • マイナポータルの不開示措置の申請

  • 加害者を代理人設定していた被害者は、その設定の解除

  • カードの停止

  • マイナンバーの変更 


 現在、行政でもマイナポータルの不開示措置について検討しているようだが、市区町村により認識や対応のばらつきも生じるだろう。加害者に住民票が開示される危険以上に、逃げている被害者の身に危うくしてしまうのが、マイナポータルの怖さの一つでもある。

 

 また、所得税の申告ではe-Taxのために住基カードが必要だったが、今後はマイナンバーカードが住基カードに代わって必須になり、マイナンバーカードは大幅に普及してしまう恐れがある。安価なカードリーダーは、PCの付属品や内蔵品になってしまうかもしれない。

 

 マイナンバーの危険を考える以前に、「コンビニで住民票が取れる」「e-Taxが出来る」「児童手当の手続きが簡単」など、目先の便利さ?や歌い文句でカードを作る人、カードを持っていないと福祉サービスが受けられないと間違った認識をしていたり、一種のステイタスであるかのように思い違いをしてカードを作ってしまう人が出てきている。

しかし、マイナポータルのように個人情報が何処で漏れてもおかしくないことは、DV被害者やストーカー被害者にとり、今までにない危険が増えることは知っておきたいと思う。

                                               (Y

                                                         (2017.10/30)